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今日 - 合計 - 悠久幻想曲 2nd Albumの攻略ページ 目次 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 名前 コメント 選択肢 投票 役に立った (0) 2012年10月09日 (火) 15時27分03秒 [部分編集] ページごとのメニューの編集はこちらの部分編集から行ってください [部分編集] 編集に関して
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1999年12月22日発売4ブロック キャンペーンとして、一部ショップでポケットステーションオリジナルゲームが配布されていました。 予約キャンペーンでも貰えたようです。 本編にはポケステ用ソフトは収録されていません。 内容は、記憶力ゲームとキャラとの会話が行えます。 クリアすると、特別なグラフィックが見られます。 【収録内容】 ルーティ / バーシア / フローネ / ティセ / メルフィ 【参考サイト】 悠久交差点 【通信販売】 悠久幻想曲3 Perpetual Blue
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前ページ次ページ悠久幻想曲ネタ <その価値は 3> 「私が知っていることはこれくらいだ。もっとも、私が知らないこともあるかもしれないが」 カップの中身をゆるりとかき混ぜながら、レジェンドはそう締め括った。 予想だにしなかった事実を知り、シンは喘ぐ様に口を開いた。 しかし言葉は出てこない。何かを言うべきだと分かっていながらも何を言えばいいのか分からなかったからだった。 「補足するが、どうせ私たちは長く存在することは出来ないだろう。深く情をかけないことを勧める」 淡々と、まるで他人事のようにレジェンドは語る。その態度がシンの癪に障った。 「お前は、何も感じないのか? 自分のことだろ!?」 シンは立ち上がっていた。周りの視線が集まるがそれを気にするほどの余裕もないほどに感情が高ぶっていた。 「そんな……そんな風に割り切ることが、何でできるんだよ」 憤りと、悲しみ。それらの思いがシンの中でない交ぜになっていた。 「何故、君はそこまで怒っている?」 不思議そうな顔で尋ねるレジェンドに対し、シンは呻くように答える。 「お前はここにいるだろ? 生きてるんだろ? それなのに何で、今にも消えそうな顔してるんだよ……」 そんな感覚を、シンは一度だけ実感したことがある。 守ると約束した少女が苦しむ姿を黙って見ていることができず、その手を握った時の感覚。 確かに目の前に存在するのに、冷たく、力なく握り返してくる手。幻影のようなその姿に自らの無力さを痛感す るしかなかった、あの時の感覚。 もう二度と、味わいたくなかったこの感覚。 「生きて、いる?」 呆然と聞き返すレジェンドの姿に、少年の影が重なる。 (どんな命でも……) その言葉を『彼』がどんな気持ちで語ったのかを今さら思い知りながら、シンは告げる。 「――どんな命でも、生きられるのなら生きたいだろう」 「……それは」 「生きているということはそれだけで価値がある。どっちもお前に乗ってた奴が言ったことだ」 レジェンドが目を伏せる。もはや会うことも叶わないマスターの言葉に何かを感じたのか、その目に感情が浮か んだように見えた。 「俺はこれからもお前たちの仲間を捜す。そいつらが誰かに危害を加えるようならぶん殴ってでも止めるし、助け を求めてくるなら全力を尽くす」 「それで後悔するとしても、か?」 「立ち止まったまま後悔するより、一歩でも前に進んでから後悔するさ」 シンの心は決まった。このことで元いた世界の自分やその周辺を見つめ直すきっかけにもなる、そんな確信を 得ていた。 「……君は、優しいな。それはきっと弱さにも繋がるだろう」 「似たようなことを言われたよ」 そう苦笑するシンだったが、直後に驚いた顔へと変わった。 「――だが、悪い気はしないよ」 両手でカップを持ち上げるレジェンドの表情は、どこか嬉しそうなものだった ……雑貨屋で蝋燭を買い、シンは教会への道を辿っていた。 レジェンドから聞いた話を思い出す。彼女もデスティニーやインパルスと同様に、この街の住人の厚意に甘えさ せてもらっているらしい。それなりに良い関係を築いてるという言葉を信じるなら心配する必要はないだろう。 ――とはいえ、二人には伝えとかなきゃな。 いっそのことさくら亭にみんな集めた方が手っ取り早いか、と都合がつく日を考えたところで思わず苦笑した。 足取りが軽いのだ。やはり悩みを抱えたままなのは性に合わないということを心の底から実感していた。 「なるようになる、か」 今日のレジェンドのように直接会ってみなければどんな相手なのかは分からない。今まで会った三人は比較的 大人しい――あくまで比較的に――方だが、他のMSたちも同じであるということは考えにくい。 今回の話から判断するなら、出会った人間が少なからず影響するらしい。最悪の展開は前もって覚悟しておく べきだろう。 「にしても何人いるんだか……ん?」 教会が見えるところまで来たところで、シンは『それ』に気が付いた。 教会の前で、居心地悪そうにそわそわしているデスティニー。 その格好はいつものトリコロールカラーのアーマーの上からドレス――そのままでは着ることができなかったか らか相当手を加えられている――を纏い、頭の上はいくつものリボンで飾り立てられていた。 ――あれはなんだろう? 率直な疑問が浮かんだ。何やら危険な印象をシンは抱いたがここから見ていてもその理由が分かるはずもなく、 仕方なく近づくことにする。 「え~と……デス子?」 シンの呼びかけにデスティニーはハッと顔を上げた。何故か涙でぐしゃぐしゃになった顔を慌ててドレスの袖で 拭い、再度シンに目を向けたときには赤くなった瞳以外は真剣な表情に変わっていた。 「お、おかえりなさいです!」 「あ? あぁ……」 ただいま、とシンが返す間もなく顔を徐々に朱に染め上げていくデスティニーは叫ぶ。 「お、おおおお、お、お兄ちゃん!」 「…………」 痛々しい沈黙が場を支配する。ポカンと口を開けたままのシンと、真っ赤になって俯いたデスティニー、二人と も次にどう行動するべきか図りかねていた。 「……あー、」 考えがまとまらなくなったシンの口が思考と直結する。 「なんか、変なものでも食ったか?」 短絡的な行動を後悔する暇もなく、顔を羞恥と涙で染めたデスティニーの小さな拳がシンのみぞおちに突き刺 さっていた。 「ごっはぁ!?」 悶絶して倒れるシンの視界に泣き喚きながら何処へと走り去っていくデスティニーの背中が映る。 「……おっかしいなぁ、お兄ちゃんは間違いなく妹好きな感じがしたのに。私のドレスとリボンも着けたのになんで こんなに反応が悪かったんだろ?」 どこからかローラの声が聞こえてきた。事の真相を知ったシンは恨み言を吐くこともできず、意識を手放した。 ……ピアノの旋律が部屋の中に響き渡る。 レッスンが終わった後にはいつも反復練習の意味も含めて同じ曲を繰り返し弾く、子供の頃からのシーラの習 慣であった。 両親に言われてに始めたピアノだったが、このレッスンが終わった後の演奏は彼女が子供の頃から好きな時間 だった。教えられるままに弾くことでは感じることのできない手ごたえを感じることができるからだ。 「――新しい曲か」 演奏が止まる。シーラが窓へ目を向けると、背を向けて縁に腰をかけているレジェンドがいた。 「あら、今日は早いのね」 「久しぶりにシーラのピアノを聴きたくなってね。ひょっとして覚えたてかな?」 ええ、と答えてシーラは再び鍵盤に細い指を走らせる。 穏やかな調べをレジェンドは目を閉じたまま聴き、演奏を疎外しない程度の声でシーラに語りかけた。 「シン・アスカに会ったよ」 「ひょっとして今日の昼?」 「あぁ、話し相手になってもらった。君が両親以外に初めてピアノを聞かせた相手というから気になってね」 曲調がわずかに乱れる。後ろを振り向かずとも、レジェンドにはシーラの表情が分かった。 そのことに気付かない振りをして話を続ける。 「自分に素直な少年だったよ。良くも悪くもまっすぐで、とても危うい」 わずかにレジェンドの瞼が上がる。そこに宿った感情は――哀れみ。 「無茶な頼みかもしれないが、彼の力になってほしい」 もちろん自分も出来うる限りのことはするつもりだが、と補足して彼女は返答を待った。 ……曲調が変わる。 「私になにができるのかはわからないけど」 その言葉に満足したように頷き、レジェンドは目を開け天を見上げる。 黄昏と群青が入り混じった空には月と星が浮かんでいた。 ――今までは特に何も感じることはなかったのだが…… こういう景色は嫌いではないと胸中で呟き、レジェンドは楽しげに笑った。 「今日は良い日だったよ。なにしろ初めて紅茶を美味しいと感じてね……」 昼と夜の境目で、ピアノの音色が止まるまで少女たちの会話は続いた。 前ページ次ページ悠久幻想曲ネタ
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今日 - 合計 - 悠久幻想曲3 Perpetual Blueの攻略ページ 目次 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 名前 コメント 選択肢 投票 役に立った (0) 2012年10月09日 (火) 15時12分03秒 [部分編集] ページごとのメニューの編集はこちらの部分編集から行ってください [部分編集] 編集に関して
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今日 - 合計 - 悠久幻想曲 ensemble vol.2の攻略ページ 目次 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 名前 コメント 選択肢 投票 役に立った (0) 2012年10月09日 (火) 15時27分04秒 [部分編集] ページごとのメニューの編集はこちらの部分編集から行ってください [部分編集] 編集に関して
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前ページ次ページ悠久幻想曲ネタ 紅の翼が、どさりと地に堕ちた。 その音にシンは慌ててデスティニーへと視線を戻す。直撃こそしなかったものの、炎の壁を破ってきたこともあっ てかすぐには立ち上がれないようだった。 「よォ、どうだ? サイコーな気分だろ?」 「お前と一緒にするな。しかし認めなければならないようだ」 卑しい笑みを向けるシャドウを一瞥し、黒いデスティニーはよろよろと立ち上がるデスティニーを睨みつける。 「この耐え難い不快感、抑え切れない衝動……なるほどな、嫌というほどに自分という存在を思い知ってしまう」 「お前の好きにすりゃあいい。『汝の欲することを成せ』、ってな」 「言われなくてもそうさせてもらう」 両肩から漆黒のフラッシュエッジを引き抜かれた。サーベル状に光の刃が伸び、鋭利な輝きを放つ。 「う……」 足元をふらつかせながらデスティニーは呆然としながらゆっくりと近づいてくる影を見つめていた。 シンと同じく、信じられないもの見たというように目を見開いて。 トン、と軽く地を蹴ると同時に黒い翼が広がり、地面を滑るように飛んだ。刹那の間にデスティニーにを間合い の内に捉えた二つの刃が光の弧を描く。 「っ!?」 我に返ったデスティニーがアロンダイトでフラッシュエッジを受け止める。 本来ならばビームの粒子同士が干渉することはないのだが、この世界でのビームは物理魔法に類似するもの となったためにこのような現象が起こるのだった。 突進の勢いは殺されることなく、二体は鍔迫り合いの状態のまま天窓の近くまで昇っていった。 「デス子っ!?」 「アイツを心配してる余裕があんのかァ? テメェだって変わんねェだろうがッ!」 ハッとシンが視線を戻した瞬間、旋風のような蹴りが飛んできた。上体を反らしてギリギリのところで直撃を免れたシンの前髪が数本散る。 「コイツっ!」 「なァに睨んでやがる。こんなときに余所見してる方が悪いんだろ!?」 癇に障る笑い声をあげながらシャドウはさらに手数を増していく。上下左右、あらゆる場所から自在に振るわれ る刃に怖気すら感じつつシンは紙一重という危うい状態で避け続けていた。 「なら、これでっ……!」 間合いを取るために背後へと飛びながらシンはベルトからダガーを抜き撃つ。瞬時に放たれた刃は動きの止まったシャドウの眉間に向かって突き進み、 ――空中で止まった。 「ハッ、残念だった……!?」 左手の二指でダガーを挟み取ったシャドウの言葉が途切れ、頭を仰け反らせた。 ……シンはダガーを二本持っていた。うち一本をバックステップしつつ投げ、そのまま手首のスナップを利かせ て二本目を連続して放ったのだ。 相手の動きが止まった瞬間を狙い、一本目を防いだ直後の油断を突いた連撃。本命である二本目を顔面から 生やしたシャドウはゆっくりと仰向けに倒れていく。 「これでっ!」 「――ひまった(決まった)、ってか?」 倒れかかったシャドウの上半身がピタリと止まり、弾かれたバネのように跳ね戻った。顔に突き立ったかと思わ れたダガーは歯の間に挟まれ、プラプラと揺れていた。 「おふぃかった(惜しかった)、なァ!」 ブッ! と吹き出されたダガーが今度はシンに向かって飛ぶ。首を振って避けたシンに肉薄したシャドウが叩き つけるように黒刃を振り、掲げられた白刃と火花を散らす。 「なかなかイイ線いってたな。けどまだ足りねェ、もっともっとお前の憎しみをぶつけて来い! もっと! もっとだ! もっともっともっともっともっとォ!!」 「くっ……!」 ギリギリと押し付けられる刃に抗いながら、シンは目の前で哂う相手を倒す方法を必死に考え続けていた。 ――シンとシャドウの頭上、燃え盛る壁から舞い散る火の粉を浴びながら二体のデスティニーたちもまた激戦を繰り広げていた。 紅と漆黒の翼が交差する度に光が弾け、時折赤や緑の光芒が放たれる。 「……フン、大剣に頼り切った粗雑な攻撃だ。動きに無駄がありすぎる」 振り下ろされたアロンダイトを最小限の動きで避け、黒いデスティニーはフラッシュエッジでその間隙を切り裂く。 針の穴を通すような正確な反撃に徐々にではあるがデスティニーの装甲に傷が目立ち始め、生身の部分から は血のように淡い光が飛び散っていた。 何合目かの打ち合いの最中、痛みからか顔をしかめながらデスティニーは叫んだ。 「っ、どうしてこんな……貴方はいったい!?」 「説明の必要などないはずだ。お前にも分かることだろう? それとも認めたくないだけか!」 光の刃を互いに押し合わせたまま膠着状態が続いていたが、表情を変えないまま黒いデスティニーは相手を 蹴り飛ばして右手のフラッシュエッジを投げつける。 「何の話を……」 ビームのブーメランを避けた先を狙い、黒いデスティニーはビームライフルを連射する。完全に防戦一方となったデスティニーはビームシールドを展開しながら放たれ続ける光の雨をなんとか凌いでいた。 「まだとぼけるか。それとも本当に分からないのか……まぁいい」 わずかに眉間に歪めながら、黒いデスティニーは高エネルギービーム砲を展開する。 「それでも構わん。私は私の存在を証明するだけだ……貴様を完全に破壊してな!」 砲口に光が集束し、放たれる。赤く輝く光の束はビームシールドに直撃し、デスティニーはその場に縫い付け られたように動きを止めた。 「このっ!」 反撃の糸口を作り出そうと自身もビームライフルに手を伸ばしたデスティニーだったが、突然襲いかかった 背後からの衝撃に空中でバランスを崩した。 「え……?」 唖然とするデスティニーの視界に飛び込んできたのは回転しながら主の元へと戻っていく光の輪、そして砕け た自身の羽根の一部だった。 「――散れ」 再び両手に刃を携えた黒い影が躍り出た。 ――どうする? 変幻自在に襲いかかってくる黒刃を避け、受け、弾きながらシンは自問する。 ――こっちに残った得物はナイフ1、ベルトのダガー2、左の袖に隠してる投げナイフ1……相手は手持ちの ナイフだけ。だけどまだ魔法を温存してる。 シンの背中に悪寒が走る。こめかみを掠めていった刃の冷たさではなく、相手がまだ余力を残しながら自分を 翻弄していることに気付いたからだ。 既にシンの身体はかなりの傷ができていた。対してシャドウは無傷、シンのナイフはその影すらも捉えられずにいた。 ――こっちの癖まで読まれてる……? そこでシンは自身の中で膨らみかけた疑惑を押し殺した。 過度な思案は動きを鈍らせる。まして今考えても仕方がないことに思考を割くわけにはいかない。 この場で求めなければならないことは、どう凌ぐか、どう倒すか、どう逃げるか。 既にシンの頭の中に逃亡の案はなかった。目の前の相手は、どうしても倒さなければならない相手だと本能が 訴えていたからだった。 「ハッ、悩め悩め。考えるのをやめちまったら頭と身体が別れ話始めちまうぞォっ!」 挑発と共に鋭い中段蹴りが飛んでくる。肘と膝で蹴り脚上下からを挟むように受け止めたシンだったが、衝撃を 殺しきれずに弾き飛ばされてしまう。 「ぐっ……!?」 「まァ、考えたところでどうしようもないもんはどうしようもないけどな」 口の端を吊り上げながらシャドウはクルクルとナイフを弄ぶ。その態度には変わらぬ余裕があった。 油断。目的までは分からないものの、シャドウはシンをすぐに殺すつもりはないようだった。強者が弱者を相手 に自らの力を誇示するかのように、じわじわと痛めつけている。 隙があるとすればそこだ。自らの優位を疑わない心理には必ず死角ができる。 そして、シンが勝てる要素があるとするならもうひとつ。 ――あのときの感覚。 連合の大型MAと戦ったときに掴んだあの感覚。そしてフリーダムを倒したときにも生じたあの感覚。 周囲に意識が広がり、敵MSの細かい挙動まで感じ取ることができた、あの感覚。 ――あれが、あれさえ来ればコイツにだって……! あくまで仮定の話だ。そもそもMSに乗っていたときにしかその状態になったことがないのだ、生身でも同じよう になるのかはシン自身にさえ分かっていない。 だが、そんな不確定なものにも頼らなければならないほどにシャドウは強かった。 「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」 シンは雄叫びを上げて強引に攻め込む。五体すべてを総動員した連撃、さすがのシャドウもこのすべてを避け ることはできずに身を守ることに徹した。 一転して攻勢、しかしシンは余裕を実感することなくシャドウが握るナイフの動きに集中する。 攻めるにしろ守るにしろこの動きを見逃してしまったが最後、すぐに勝負は決まってしまう。シンにとって最悪の形となって。 「ハッ! 盛り上がってきたじゃねェか。だがァ……」 突き出された白刃と黒刃が交差し、動きを止めた。シャドウのナイフ、奇妙に折れ曲がった中心の内側にシン のナイフが絡み取られたのだ。 「はしゃぎすぎるとこうなっちまうんだぜっ!」 ブン! とナイフが振られ、絡まったナイフごとシンの身体が引っ張られてバランスを崩した。 「くっ……!?」 背中に冷汗が浮かぶのを感じながらもシンはシャドウのナイフから目を離さなかった。不利な体勢とはいえ、 最悪腕一本を犠牲にすればこの窮地は避けることが出来る。 だからこそ、シンは視線をシャドウのナイフに集中させたのだ。 だが、 ――動かない? この決定的とも言える隙を前にしてシャドウは動かなかった。 微動だにしない右腕、まるで動きを悟られないためにじっとしているかのような…… そこでシンは気付いた。視界の端、唯一動きを見せていたシャドウの左手。 その中に握られた、小さな刃に。 ――あれは、俺の……? 紛れもなく、シンのベルトに差してあったスローイングダガーの一本。おそらくは先程の連投、二本のうち左手 の二指に止められた一本。 「――首、もらったぜ?」 シャドウの呟きを聞いたシンは反射的に首を守ろうと両腕を交差しようとし、一瞬早く、鮮血が舞った。 前ページ次ページ悠久幻想曲ネタ
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登録日:2014/11/18 (火) 23 55 00 更新日:2023/03/13 Mon 19 43 35NEW! 所要時間:約 11 分で読めます ▽タグ一覧 PS SS UQ UQ2 moo ゲーム シミュレーションゲーム セガサターン メディアワークス 悠久 悠久2 悠久幻想曲 悠久幻想曲 2nd Album 悠久幻想曲 2nd Albumとは、メディアワークス(現:アスキー・メディアワークス)から販売されたSSとPS用シミュレーションゲーム。 悠久シリーズの第2弾にあたる。 略称は悠久2あるいはUQ2。 キャラクターデザインは引き続きmooが担当している。 ◇概要 前作「悠久幻想曲」の直接の続編にあたり、舞台は前作のエンディング直後のエンフィールド。 前作発売から約半年後の販売ということもあってか基本的なコンセプトやシステムに関しては前作を踏襲しており、 10人の仲間達から3人を選んで依頼をこなしていく事にも変更はない。 今回は前作で敵役であった自警団が舞台となっており、前作のサブキャラクターが新たに声付きでメインに昇格。 前作の仲間達も声なしではあるが立ち絵を一新し、サブキャラクターとして登場する。 豊富な会話パターンや魅力的な脇役達は引き続き健在であり、キャラクターが増えて一層、賑やかになったエンフィールドの街を楽しむ事が出来る。 一方でメインのシナリオは前作以上にきな臭い展開が目白押しとなっており、真相解明には複雑な手順を踏む必要もあってか評価が良いとは言い難い。 ◇ストーリー 街の苦情処理を担当する自警団第三部隊は人望の厚いノイマン隊長の指揮の下懸命に働き、街の人々から信頼されていた。 しかし、ノイマン隊長が亡くなった事で隊員達は士気を失い、自警団の予算削減によって苦情処理の仕事が有料化されてしまったため、第三部隊への依頼は激減してしまう。 更に追い討ちをかけるように、苦情処理を無料で引き受けるライバル組織「公安維持局」が設立。 相次ぐ逆境に意欲を失った隊員は次第に第三部隊を離れ、残ったのは主人公1人だけとなってしまった。 第三部隊を解散させたくない主人公は、自警団の団長に部隊存続の直訴を行い、 その場で「一年間暫定的に活動し、その間の街の人々の反応を見て存続か解散かを検討する」という団長の提案を受け入れる。 しかし、第三部隊は今や主人公1人しかおらず、このままでは苦情処理を受けることができない。 そのため、気心の知れた仲間に第三部隊の隊員となってもらい、一緒に働くことにしたのだが………。 ◇システム 育成パート 後述する10人の仲間達から3人を選出し、自警団第三部隊を運営しながら能力の育成を行うパート。 基本的には前作と同じだが、休日にもセーブ・ロードができるようになり、コロシアムでタッグマッチができるようになった。 仕事に必要な能力が整理・変更されており、前作では必要な能力を育てるだけで良かった魔法や奥義の習得には覚醒値を溜めることが必要になった。 覚醒値は仕事内容で変動する地水火風の属性に応じて溜まっていくため、欲しい奥義やステータスアップを狙うなら仲間の属性に気を配りながら仕事を割り振る必要がある。 敵も全体的に固くなっているので戦闘難易度も高くなっている。 また今回は仲間への給料だけでなく自警団への上納金も支払わねばならないため、覚醒値の仕様も相まって序盤は資金面で苦労する事が多い。 ただし、プレイ次第では1度も戦闘を行わずにクリアできるため、仲間のエンディングを見るだけならば自由に育てても支障はない。 すごろくパート メインシナリオからはリストラされ、いつもで任意に請け負う事ができる「任務すごろく」として独立。 失敗してもエンディングの到達には何の支障も出ないが、強制的に全員参加となるため、その週の売り上げが落ちてしまうという難点がある。 やらなくてもゲームはクリアできるが、ライバル組織である公安維持局との絡みがこのイベントに集中しているため、 ただでさえ影が薄い彼らが一層、目立たなくなってしまう。 ヒロイックゲージ 前作と同じ住民達からの信頼度。 1年という期間の中でこの値を一定以上に上げる事ができれば、第三部隊は存続となる。 ただしエンディング次第では………。 今回も特定のキャラクターとエンディングを迎えるためには仲間からの信頼やヒロイックゲージを調整する必要がある。 ◇登場人物 メインキャラクター 主人公 CV:なし プレイヤーの分身。 自警団第三部隊の隊員であり、暫定の部隊長。 前作の主人公と比べると落ち着いていて住民達からの評判も良好。最大の違いは片方だけだがCGに目が描かれている事。 第三部隊存続のために気心を知れた仲間達と共に任務へと臨むのだが、 いくら苦情処理が専門とはいえ自警組織に女子供(しかも何人かは10代前半)を誘う辺り、彼も立派な悠久シリーズの主人公。 言動やCGはどう見ても男性だが設定上は性別不明。 アルベルト・コーレイン CV:置鮎龍太郎 前作からの続投組。 自警団第一部隊隊員。 前作では何かとちょっかいをかけてきたお邪魔虫だったが、今回は同じ自警団の主人公が仲間という事もあってか非常に協力的で頼れる兄貴分となる。 相変わらず血気盛んで暴走気味、化粧が趣味な事も変わっていないが、無理やり押し掛けてきた妹から私生活に口出しされたりと気苦労の多い面も見られるようになる。 アリサさんへの愛は変わらずアプローチを続けているが、例の如く報われない日々を繰り返している。 リオ・バクスター CV:久川綾 資産家の御曹司。大人しい性格で人見知りが激しく、普段は部屋にこもって本を読んでいる。 前作のクリスと同じく由羅に気に入られているが、彼と違って女性自体は苦手ではないので怖がって逃げたりはしない。 高い魔力を持ち、姿が見えない獣に付きまとわれている。 シリーズ最年少の12歳。 ルー・シモンズ CV:松本保典 どんなことでも軽くこなしてしまうクールな天才青年。しかし協調性が皆無で、非常に気まぐれ。 また合理的な性格に反して占いや迷信を相当気にしており、自分用のタロットカードを持っているほど。 その日の行動も占いで決めている。 実は父親と仲が悪く、勘当されている。 イヴ・ギャラガー CV:天野由梨 前作からの続投組。 旧王立図書館で司書のアルバイトをしているクールな女性。 数年前に亡くなった著名な人形師を父に持ち、その遺産である大きい屋敷で一人暮らしをしている。 無駄を嫌う合理主義者でその雰囲気はどこか人間離れしているが………。 ヴァネッサ・ウォーレン CV:鶴ひろみ 自警団のライバル組織である公安維持局の局員。 エリート意識の高い同僚との考えの相違から休職し、そこへ主人公の誘いを受けて自警団に参加する。 その経歴から生粋の自警団員であるアルベルトとは仲が悪く、顔を合わせればすぐに喧嘩に発展する。 また頼れる大人の女性と見せかけて現場経験はゼロという典型的なマニュアル人間でもある。 セリーヌ・ホワイトスノウ CV:宮村優子 教会にある孤児院で子供達の世話をしている女性で、自身も孤児院出身。 桁外れの方向音痴で、簡単な買い物さえも迷子になりがち。加えて言動もスローペースでおっとりしており、一緒にいる人間のペースを狂わせる。 世の中には悪い人はいないと思っているため、人に騙され易い。 また占いがよく当たる、腕力が強い、台所に立つと腕が勝手に動いて料理が出来上がるなどの隠れた才能を持つ。 ディアーナ・レイニー CV:浅田葉子 トーヤの元に押しかけ、勝手に弟子を名乗っている医師志望の少女。 普段着の白衣もトーヤの真似をして繕ったもの。 医学の知識は豊富だが、血に極めて弱く見ただけで気絶してしまうほどであり、 治療中もドジを連発するほどのおっちょこちょい。しかし、医学を志す気持ちは本物であり、前向きでやる時はやる子。 トリーシャ・フォスター CV:飯塚雅弓 前作からの続投組。 相変わらず流行に敏感で、明るく人見知りをしない性格。 普段の振る舞いからは感じられないが、幼いころに母を亡くしており、父のリカルドだけが唯一家族といえる存在である。 しかし、多忙な父とすれ違いが続いており、家族としての関係に悩みを抱えている。 必殺技は斜め45度に静かに振り下ろす「トリーシャチョップ」 橘 由羅(たちばな ゆら) CV:佐久間レイ 前作からの続投組。 キツネの耳と尻尾を持つ希少種族ライシアンの女性。 相変わらずの酒好きで自堕落な生活を続けており、年下好きも変わっていない。 最近はクリスとリオのどちらを選ぶかがもっぱらの悩みの種。 一方でライシアン狩りに狙われているなど、周囲に物騒な気配が漂い始めている。 ローラ・ニューフィールド CV:金丸日向子 前作からの続投組。 前作の終盤において、重病にかかっていたが当時には治す医術がなかったので、100年間魔法で仮死状態になっていたことが判明。 前作主人公の活躍で体も見つかり病気も治り、現在は教会で元気に暮らしている。 燃えるような恋に憧れ、背伸びしたがるお年頃。 主人公の事を「お兄ちゃん」と呼んで慕っている(ちなみに主人公は性別不明である)。 サブキャラクター クレア・コーレイン CV:岩男潤子 非常に丁寧な言葉遣いが特徴的なアルベルトの妹。 他の街の名門女子学校を卒業し、アルベルトに会うためやってきたのだが、 アルベルトの生活態度や「悪癖」を矯正するため、無理矢理同居を始める。 日々の習慣や食生活にまで口やかましく介入してくるが、それもこれも尊敬する兄を更生させたいという一心から来るものである。 彼にとっては有難迷惑なのだが。 ヘキサ CV:西村ちなみ 主人公をサポートさせるため、リカルドが1年間限定で召喚した使い魔。 しかし、いたずら好きで口が悪く、却ってトラブルを発生させがちな上に仕事では何の役にも立たないため、 ただの無駄飯食らいとなっている。 リカルド・フォスター CV:なし 事件の捜査や戦闘を担当する自警団第一部隊の隊長。 主人公のために色々と便宜を図り、アルベルトに手助けを頼むなど相変わらずの良い人。 作中最強の実力は健在だが、今回は娘のトリーシャとの関係が上手くいっていないなどの人間的な弱さも描かれている。 ラジオのドラマでは本家本元「トリーシャチョップ」が使える事が発覚し、娘同様ある人物の暴走を見事に止めている。 ランディ・ウェストウッド CV:なし エンフィールドに大量のよそ者を連れてきた謎の男。 本作のメインシナリオの端々で暗躍し、事件に関わった主人公達と敵対する。 片腕が義手、得物がボウガンというハンディを持ちながらも主人公を赤子のようにあしらう相当の実力者。 全身に危険な気配をまとったその佇まいは明らかに出る作品を間違えている。 公安維持局の局員 CV:なし エンフィールド評議会の反自警団派が設立した苦情処理専門の公共機関「公安維持局」の役員。 各地のエリートを選りすぐって設立されたのだが、現場経験の乏しさや高すぎるエリート意識、住民への態度などから評判は悪い。 公安維持局長のラーキンは比較的まともなのだが、任務すごろくなどで第三部隊と敵対するパメラ、ギャラン、ボルの3人組は、 とにかく陰険でロクに住民からの依頼もこなさず邪魔ばかりしてくる。 ジョンとヤス CV:なし 任務すごろくで敵対する2人組の商人。 背景の説明も主人公との絡みもなく、いつの間にかすごろくに参加している事が多い。 その他、前作の登場人物達 アリサの目の治療方法を求めて旅に出た前作主人公と、とある理由から街を離れているシーラ以外の主要な人物が続投。 脇役として随所で物語を彩ってくれる。 余談 実はこのゲーム、普通にプレイしたのではメインシナリオの謎が中途半端のまま放置され、1年間で起きた事件の真相が闇に葬られてしまう。 真相に辿りつくには仲間(特に主人公)をきっちりと育てた上で正しい選択肢を選び続け、その上でゲームを3周する必要があるという面倒な手順を踏む必要があり、 事前情報がなければまず真相まで辿りつけない。 尚、当時は攻略本も販売されていたが真相への辿りつき方については誤った記載がされていた模様。 追記・修正は真相に辿りついてからお願いします △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 真相まで辿りつけない. -- 名無しさん (2014-11-19 18 49 03) ↑失敗した。俺のことだーーーー!!!パパ…一体何パパだったんだ… -- 名無しさん (2014-11-19 18 51 00) 終盤、ヒロイックゲージが一杯になったから油断して住民からの依頼をほったらかしにしてはいけない!でないと自警団そのものが解散してしまうぞ! -- 名無しさん (2014-11-19 19 02 35) 学生の頃嵌ったな。結局真相には辿り着けなかったけど。トリーシャが好みど真ん中だったから、2でメインキャラになると知った時は小躍りした。 -- 名無しさん (2014-11-20 00 06 47) 2は真相にたどり着けないままだったな・・・1に比べると難易度高めだったのかな? そしてアルベルトエンドでアーッ!な雰囲気だったのは覚えてるw -- 名無しさん (2014-11-20 08 08 15) 「お兄ちゃん」って呼ばれてるのに性別不明ってどういうこっちゃ -- 名無しさん (2014-11-20 11 20 33) ↑このゲームはキャラクタープロフィールが見れるのだけど、主人公はすべて不明になっている。ほかに性別不明キャラがいない 前作はそこだけは男設定になってたので…… -- 名無しさん (2019-01-30 22 54 42) 懐かしいな。メインストーリーは記憶通りなら単に旧隊長と団長の関係が明かされるだけだったような気が(確かトラヴィスが解説しに出てくれば成功)。計画が杜撰な上に主人公が関われないまま方針を変えて裏で決着つけちゃうんで、謎というか置いてきぼりにされたまま全てが終わり、後始末の解説という感じの結末だった。 -- 名無しさん (2023-03-13 19 43 35) 名前 コメント
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前ページ次ページ悠久幻想曲ネタ <三つの『D』> ――『それ』が目覚めたとき、辺りにはむせ返りそうな程の生い茂る緑だけがあった。 いつからここで倒れていたのかなど『それ』には分からない。 本能的に理解したことは、自分が生まれ落ちてそう間もないこと。そして自分が何者であるかということ だけだった。 上体を起こし、ぐるりと周囲を見渡す。四方の判別がつかないほど木々と草以外に何もなかった。 「…………?」 明らかに自然の奏でるものとは異なる音にその方向を見やる。 低く唸るようなそれは、初めて耳にするはずだというのに聞き覚えがあった。 やがて、音を発していたものが木々の間を縫うようにして現れる。 三人の少女。戦闘機の羽とジェットエンジンを無理矢理くっつけたようなものを背に着けている。 ――ウィンダム。 『それ』の頭の中にひとつの名前が浮かぶ。中空に浮かびながら無表情に見下ろす三つの同じ顔。『それ』は 自然とのひとつに向けてそっと手を伸ばす。 次の瞬間、ウィンダムの腹部に巨大な穴が穿たれ爆散する。 『それ』は驚いた表情で伸ばした自分の手を見る。今しがた放たれたビームを発した何よりの証拠である白い 煙が立ち上っていた。 残った二体が表情を変えず左右に展開して手に持ったビームライフルの銃口を『それ』に向ける。 ――だが遅い。 二つのライフルよりも一瞬早く『それ』の両手が光を放った。 爆音が二つ。残響が消えた後は『それ』が目覚めた直後の静寂が戻る。違いがあるとすればビームに撃ち抜か れた木の焦げた臭いが増えた程度だ。 ――行かないと。 ここには留まれないと判断して立ち上がる。改めて辺りを見ても何も分からなかったので、ウィンダムたちがやって来た 方角とは真逆の方へと歩き始める。 ――『それ』は知る由もなかったが、その先にはエンフィールドと呼ばれる街があった。 ――世の中には、絶対に関わりたくない相手がいる。 こちらを本気で殺そうとする相手、 破滅的な願望も持つ相手、 とてつもなく変態的な相手、 ……まぁそのうちのいくつかに知り合いが当てはまることがないわけではないが。 ともかく、細かく述べていけばそういった相手は無数といっていいほど存在する。 そしてこのとき、シンの頭の中で新たな絶対に関わりたくない相手のジャンルが追加された。 ――高いところで誇らしげに高笑いをする相手、である。 「おーっほっほっほっほっほ!」 真昼間のセントラルロットに高笑いが響き渡る。それほど高さのない建物が並ぶ中では頭一つ抜けて大きな 集合住宅の屋根の上、そこに立つ三人の少女のうち一人――カオスが挙げた声だった。 人通りの少ない時間帯とはいえ、ここまで目立つことをしては注目されるのも当然だろう。 もっとも、それを向けられる側としてはたまったものではないが。 「なぁデス子、今夜何食いたい?」 「たまには牛さんのお肉も食べたいです」 「少しは俺の懐を考慮に入れて意見しろ」 なのでこうして、「あくまであれと自分たちはまったくもって一切合切1ミクロンとも関係ありません」と 言うように二人揃って今夜の食事について話し合ってたりしていた。 「おーっほっほっほ! おーっほっほっほっほ!」 高笑いを続ける少女もまったくの無反応のせいか止めるタイミングを見失い延々と繰り返していた。 隣に立つガイアとアビスもまったく話が進まない状況に呆れていたようだった。口を挟まないのはあくまで 反応を待ち続ける少女の顔を立てるつもりでいるためか。 だが、シンはそれらの事情を把握しつつあえてすべてを無視した。 栗すらない火中に手を突っ込むような真似をするほど愚かではない。根本的な解決にはなっていないが。 「うー、でもマスターが夕飯作る日で牛肉料理があった覚えがないです」 「自腹で負担だからな。って言っても仕事くれるのもアリサさんだから自腹って言えないか」 「とにかく牛が食べたいです。牛! ビーフ!」 「却下、おとなしく鳥か豚で我慢しろ」 会話だけなら他愛もない内容。頭上で妙な笑い声が響いていなければの話だが。 「おーっほっほっほっほっほ! おーっけほっ! げほげほっ!」 むせ始めた。そろそろ限界かもしれない。 「んじゃ行くか」 「はいです」 「ちょっと待て……いやお待ちなさい! けほっ!」 喉が限界に達するほど存分に笑ったので満足したのだろうと思ったが、どうやらまだ用があるらしい。 デスティニーに軽く目配せして警戒を強めるよう促しつつ話を聞くためカオスの方へと顔を向ける。 「――今夜はビィフですね」 ……小声でそう呟きガッツポーズを取るデスティニーにどう伝わっているかは分からなかったが。 「で、なんか用か? 聞いての通りこれから夕飯の準備しなきゃいけないんだけど」 「え、えぇ! そうですとも用がありますとも! だというのにさっきから私を無視してやれ牛だの鳥だの 豚だの! アビス! ガイア! 貴女たちも何か言って……ちょっと? なんですのアビス?」 今までの反動からか一気にまくしたてるカオスだったが、脇に立つアビスが微妙な顔のまま頬を掻いている 様子を見て怪訝そうに眉をひそめた。 「いやな……今日は出直さね? 今のですっげーテンション下がったし」 「はぁ!? 今さら何を!?」 「変に注目集めちまったしさぁ……ここにいなけりゃオレだって他人のフリしてたっての」 「う、うるさい! ガイア、貴女も何を黙りこくって……」 「? どちら様?」 「堂々と他人の振り!?」 何やら漫才が始まった。デスティニーと目だけで会話し、さっさと帰ろうと背を向けた瞬間、 「――おいこらテメェら! 何勝手に帰ろうとしてんだコラァ!? これ以上舐めた真似してっとケツの穴 から脳天までドでかい風穴ブチ空けっぞぉ!? あぁ!?」 ……静寂。 シンが反射的に振り向いて誰が言ったのかを確認してしまうほどの口汚い罵声。 直接目で確認するまでもなく分かっていたことなのだが、荒い呼吸に肩を揺らしながら暴力的な輝きを宿した 目で睨みつけてくるカオスがいた。 「……ドン引き」 「お、おいカオス! 地が出てるぞおい!?」 「あ!? あ! えっと、コホン……おーっほっほっほ!」 「「そこからやり直すのかよ!?」」 反射的にアビスと同じツッコミをしてしまう。カオスはもう一度咳払いをして、こちらに指を突き付けてきた。 「とにかく! 今日という今日は覚悟なさい!」 「え? ってお前ら戦う気なのかよ」 「えぇ、こちらにも少々事情がございますので。こちらとしてもあまり目立つような真似はしたくないのですが、 このままではタダ飯ぐらいだのと言われて追い出されそうなので」 カオスの言い分にシンは何か引っかかるものを覚えた。 言い分から察するにこの三体も何者かに保護されているのだろうが、つまるところ自分を襲うように指示を 出している人間がこの街にいるらしい。シャドウのことが頭をよぎったが、即座に否定する。こうして誰かを 差し向けるよりも本人が率先して襲いに来るだろう。 思えばこの三体や普段どこにいるのかも分からない。しかし、今はそれを聞けるような状況ではなかった。 「ま、それに付け加えるなら……」 すっとカオスが手を掲げる。一瞬の間に現れたビームライフルを掴むとその銃口を向けてきた。 「――積年の恨みってやつを晴らさせてもらうんだよぉ!」 銃口からビームが放たれるより一瞬早くシンはその場から転げるように離れる。石畳に穿たれた無残な弾痕を 見てゾッとした。 「おい! こんな街中でやる気かよ!?」 「おとなしくブチのめされればすぐ済むぜ?」 ニヤついた笑みを浮かべながらアビスがランスを振り回しながら屋根から飛び降りる。 次いで相変わらずの無表情で隣にガイアが降り立ち、最後にカオスがフワリと舞い降りた 「命まで奪う気はありません。ただちょっと病院送りになるだけで結構ですので」 口調こそ落ち着いたものに戻ったがアビスのそれと同じ笑みを浮かべながらカオスはゆっくりと距離を詰め てくる。 「……マスター、下がっててください」 完全にスイッチを切り替えたデスティニーがシンと三体の間を阻むように進み出る。 「えぇ、そう来ると思っていましたわ」 くすりと笑いながらカオスはライフルを構える。 「ですので、絡め手で行かせてもらいますわ」 そう告げた瞬間再びライフルが火を噴く。背後にシンを庇っている以上デスティニーは避けるわけにもいかず 盾でビームを防ぐ。 その横を、 「――え?」 アビスが通り過ぎて行った。 呆然とするのも束の間、背後で上がった声にようやく相手の狙いを理解した。 「うおおおおおおっ!?」 「さぁて! オレらはあっちで楽しもうじゃねーの!」 振り返ると、ナイフでランスを受け止めたシンが路地裏の奥へと押しやられていく姿がかろうじて見えた。 「マスター!?」 後を追おうと羽を広げるも頭上を飛び越えて立ち塞がったガイアにサーベルを突き付けられて動きを封じられる。 「……ごめんね」 ガイアはかすかに眉根を寄せながらそう告げる。 前方にはガイア、背後にはカオス。 この二体を倒さない限りシンを助けに行くこともできないという状況にデスティニーは歯を軋むほどに噛み 締める。あまりにも迂闊にこの三体と接触してしまったことが最大の失敗であった。 「さて、あちらはあちらで楽しむようですので……こっちも楽しもうか」 顔を凶悪な笑みに染めながら、カオスは背中のポッドを射出した。 前ページ次ページ悠久幻想曲ネタ
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前ページ次ページ悠久幻想曲ネタ <ニューフェイス> 「――よし、これで今週の依頼は全部終わったな」 つい先ほど終えた仕事にチェックを入れ、シンはジョートショップへ続く道を歩いていた。 今週はシンだけでなく皆かなり調子よく依頼をこなしたので報酬も相応の色が付けられている。しばらくは 久々に贅沢な食事にありつけるかもしれないという希望に軽い感動を覚えつつシンはスケジュール帳をしまう。 すでに脳内では『さくら亭でもっともオーソドックスかつお手頃な値段のランチ』が乱舞していた。 「あう~……マスターはやく、ごは~ん」 「……わかったからお前はさっさとそこからどけ」 せっかくの感動に水を差す言葉に眉をヒクつかせつつ、シンは道中ずっと頭の上に乗っていたデスティニーを 引っぺがしてポイと放り捨てた。 「む~! それが一緒に汗水たらして仕事をした愛機に対する仕打ちですか!?」 「お前は俺の近くをずっと飛んでただけだろ! ったく、何もしてないのに飯の量だけは俺の倍は食ってるって どういう神経してるんだよ……」 むっとした顔で睨んでくるデスティニーに諦めきった視線を向けながら、シンは改めてこのタダ飯食らいには 何かしら役目を与えなければならないと固く誓った。 「む、何か「このタダ飯食らいめ、少しは人様の役に立ったらどうだ」みたいな視線を感じるです」 「あ、惜しい。最後に「このポンコツが」が入る」 「それが自分の愛機に言うセリフですかっ! 大体私だってちゃんとジョートショップの役に立ってるです!」 「え、ウソ? どんな?」 「食べ物は痛みやすいものを優先に!」 「結局消費専門かよ!?」 「はぶっ!?」 胸を張って「自分は役立たずです」と宣言したデスティニーにデコピンを見舞い、シンは頭を抱えた。 聞けばレジェンドはたまにではあるがシーラの屋敷の手伝いをしているという。ピアノの演奏に関しても 偏りのない感想をくれるらしく、シーラとの関係も良好のようだ。 インパルスたちは今もさくら亭のウェイトレスとして日々奔走している。最近はフォースが調理場も任される ようになったそうで――ただしデザートに関しては絶対に触れさせないようにしているらしいが――ソードも ブラストもそれぞれ対抗心を燃やして挑戦しており、看板娘のパティも人手が増えそうで助かると珍しく上機嫌 に報告しに来たこともあった。 そういった話を聞く度に、目の前で額を抑えながら宙でのた打ち回る相棒に軽い絶望感を覚えるのだった。 「った~……何するんですかいきなり!?」 「やかましい! 大体お前はアリサさんに甘えすぎだ。もう少し遠慮して……ん?」 もはやエンフィールドのプチ名物となった『往来で使い魔と夫婦漫才する赤目の少年』とまで呼ばれるように なった恒例行事が始まるかと思われた直後、シンはデスティニーの背後に小さな人影を見つけて眉根を寄せた。 「マスター? どうかしたんですか?」 「……あれ、見てみろ」 シンが指さす先には、道の真ん中でおろおろと右往左往している少女がいた。 ――全身に纏った赤い鎧。背中には折り畳まれた翼の付いた巨大なビーム砲がマウントされている。 大きな紫色の瞳には涙が浮かんでおり、青いメッシュの入った茶髪を揺らしながらおろおろと周りを見渡していた。 「あれってひょっとして……セイバーちゃん!?」 その姿にとあるMSを思い出したのであろうデスティニーが驚きの声をあげた。 ……ZGMS-X23Sセイバー。 インパルスと同じザフトの開発した試作MSシリーズ、『セカンドステージ』に属するMSである。 元々は大気圏内外での高機動戦に特化した可変型MSなのだが、デスティニーたちの例に漏れず小柄の 少女のような姿となっているようだった。 本来ならばすぐにでも接触するべきなのだが、シンは眉根を寄せながらどうするべきかと思案していた。 「? マスター、声をかけないんですか?」 「本当ならそうした方がいいんだろうけど、シャドウのこともある」 その名前を聞いて、デスティニーはビクリと身体を震わせた。 ……シャドウ、素性も目的も一切不明の黒装束の男。今のところわかっているのはシンへの異常なほどの敵意 のみである。 性格こそ全く違うがデスティニーと瓜二つの姿を黒いデスティニーを引き連れていたこともあり、警戒するの も無理もないことなのだが…… 「……何してるんだあれ?」 おっかなびっくりで道行く人々に手を伸ばすものの、すぐに手を引っ込めてしまう。その様子に気付いた気の 良さそうな老人が声をかけたようだが、セイバーが何度も頭を下げて謝り、老人は困ったような笑顔を浮かべて その場を去っていった。 「何か聞こうとしてるみたいですけど……?」 デスティニーの指摘通り、何かを、あるいは誰かを探しているようにも見える。しかし何度も声をかけようと して自分から退いてしまっている。あのままでは何時間経っても何の進展もないだろう。 「仕方ないな……デス子、一応注意はしておけよ」 「はいです」 意を決してシンはセイバーにゆっくりと歩み寄っていく。今のところは害意はないようだが、だからといって 安心はできない。意識の弛緩は油断を招き、そして気付けば取り返しのつかなくなることにさえ繋がる。 たとえ相手が少女のような外見であったとしても、その本質はMSという『兵器』なのだ。 「? なんですかマスター」 「……いや」 ならば、デスティニーも同じなのだろうか? 当然、例外ではない。しかしシンの胸の内ではそれを認めると同時に拒む気持ちもあった。 それはいつかの洞窟のときまであった、デスティニーたちを戦わせたくないというものとも違う感情。 それが何を意味するのかを考える前に、気付けばシンはセイバーの目と鼻の先にいた。 「デス子、周辺の警戒を」 「はいです」 そう答えてデスティニーはゆっくりと宙に上っていく。 かなり目立つが辺りを監視すると同時に、 「……おい」 「あっ……え?」 「セイバー、で間違いないよな?」 とりあえず声をかけてみる。先ほどまですっかり顔を伏せてしまっていたセイバーはその声に安堵の表情を 浮かべてシンの方へと向き、動きを止めてしまった。 (やっぱり、誰かを探してたみたいだな) 誰かと行動していたがはぐれてしまい途方に暮れていた、ということなら先ほどまでの行動も理解できる。 まずはその同行者を探してから詳しく話を聞くべきだろうと判断したシンは、警戒を緩めずにそのまま 話を進めることにした。 「誰かを探してるのか? だったら手を貸すけど……」 しかしセイバーは強張った顔でじっとシンの顔を見つめたまま何の反応もしない。 ガタガタと身体を震わせながら、胸の前で不安げに両の手の指を絡めているだけだ。 「どうかしたのか?」 「……っ!」 何かあったのかとさらに近づこうとするが、跳ね上がるほどに身体を震わせてセイバーは一歩下がって しまう。さらに一歩近づいてはまた下がり、大股で一歩近づけば三歩下がり…… 「あぁもう! なんなんだよいったい!?」 ただでさえ我慢強いとは言えないシンの限界値をあっさり振り切った。 周りの視線が突き刺さるがそんなことは一切構わずシンはセイバーに指を突き付ける。 「別に助けがいらないならいらなでいいけどな、それならそうってはっきり言えばいいだろ!? だんまりじゃこっちもどうすればいいのか分からな……」 そこでシンの言葉がピタリと止まった。 セイバーの両目から、ボロボロと溢れ出るものに気付いたからだった。 「うっ……ひっく」 「あ……わ、悪い。言い過ぎた」 心に中で自分に毒吐きながら余計にこじれてしまった話をどう修正すればいいのかと頭を抱えるシン だったが、直後に届いたデスティニーの声に思考が硬直した。 「――マスター! 二時の方向から何か来ます!」 「っ!? 迎撃は!?」 「ダメです! 他の人が近すぎて……危ないっ!」 警告を受けてシンはハッと『何か』が来る方へと視線を向ける。 低空から人の間を縫うようにして飛んでくる小さい影。 それが一気に高度を上げ、シンの顔の高さまで達すると同時に赤い光を発する足が弧を描いた。 「――挙動不審者抹殺キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィック!!」 「なっ!?」 雄叫びと共に放たれた蹴りをシンはかろうじてかわした。 逃げ遅れた数本の髪が焼き切られ、ほのかな異臭が嗅覚をついた。 「っ、お前は……!?」 無理に避けたせいで崩れかけた体勢をなんとか立て直し、シンは襲撃者を見上げる。 ――やや赤みがかったピンクの鎧。頭には特徴的なV字アンテナの他に白いトサカも付いている。 背中には機首を折りたたんだ戦闘機のようなリフタ―を背負い、細身のシルエットだというのに異様な 威圧感を放っている。 青紫の散切り頭に釣り上った大きな緑の瞳、口の端から覗く八重歯は愛嬌よりも荒々しさが滲み出て いた。 ……忘れるはずのない相手。 こちらに飛ばされる直前に戦った相手、裏切り者のかつての上官の機体。 それがシンを見下ろし、敵意に満ちた瞳を向けていた。 「貴様! 私の部下1号にいったい何をしているかっ!?」 「――ジャスティス!」 宙に仁王立ちする少女――インフィニットジャスティスを睨みかえしながら、シンはまさかの再会に 鼓動が跳ね上がるのを感じていた。 前ページ次ページ悠久幻想曲ネタ
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前ページ次ページ悠久幻想曲ネタ 迫り来る二つの光刃を見た瞬間、デスティニーは空中で『故意に』転倒した。 スラスターを閉じ、翼も畳んだ状態でビームシールドを展開、フラッシュエッジの一閃を受け止め た反動でデスティニーは後ろに弾き飛ばされ、重力に従って地面へと落下する。 「チッ!」 黒いデスティニーは舌打ちする。一の太刀を避けた先に二の太刀を叩き込んで止めを刺すつも りだったのだが、このような避け方をされてはそれも不可能だ。 しかしこれはデスティニーにとっては最悪一歩手前の状態。すれすれでブレーキをかけたようだ が、それでも地面に叩きつけられた衝撃で苦しそうに呻いていた。 「……小賢しい真似を」 不快そうに眉根を歪めながら黒いデスティニーはフラッシュエッジを収め、漆黒の大剣を引き抜く。 対艦刀という名の示す通り、アロンダイトは対MSの武装とは言い難い。まして対艦刀の中でもと りわけ大型な、あまりにも大雑把すぎるその刃は凄まじい威力を発揮する反面一撃毎の隙が大きすぎるのだ。 しかし、その無理を押し通すことが出来てこそ最強のMSの一角と呼ばれる所以である。 翼を展開し、構えは刺突。最大加速で身動きの取れないデスティニーを貫こうと翼の先端から光が漏れ…… 「――?」 目標の様子が妙なことに気付き、黒いデスティニーは動きを止めた。 デスティニーは地面に倒れたまま、あらぬ方向を向いて大きく目を見開いていた。 口は半開きのまま痙攣するように開閉し、小刻みに身体も震えている。 何を見ているのか、目だけを動かして黒いデスティニーはデスティニーの視線を辿る。 「……そういうことか」 無感情に呟きながら、黒いデスティニーもシャドウとシンの戦いの決着を悟った。 小さな刃が皮を裂き、肉を貫く。 シャドウの宣言に反射的に両腕を首の防御に回したシンだったが、その動きは半秒ほど遅かった。 スローイングダガーは両腕をくぐり抜け、首筋へと向かい…… すんでのところで軌道を変え、右肩に突き立てられた。 刺さった衝撃でシンの身体が後ろに傾いたところで足を払われて転倒する。地面に叩きつけられ る瞬間にナイフがさらに押し込まれ、切っ先が間接の間に捻じ込まれた。 「ぐっ……!」 喉から飛び出しそうになった絶叫を噛み殺し、シンは胸中で自分に問いかける。 ――何故だ? あきらかに止めを刺せるタイミングだった。だというのに 刃は強引に標的を首から肩へと移したのだ。 安堵よりも疑念がシンの中で膨れ上がる。同時に目の前で亀裂のような笑みを浮かべる相手に 底知れぬ『何か』を感じ取っていた。 「……お前、どうして」 「ヒャハハハハハハハ! つまんねェだろうがよ、この程度で終わっちまうのは!」 「こ、のっ……!」 激痛に耐えながらシンはシャドウの脇腹に蹴りを打ち込む。マウントを取られた状態だったため 威力こそ得られなかったが、シャドウの体勢を崩すだけなら十分だった。浮いた片足の隙間を 強引にこじ開け、地面を転がりながらシャドウから距離を取る。 「ハッ、悪あがきしやがって。どォせその傷じゃナイフなんざマトモに振れないだろ? せいぜい 一回か二回が限界ってとこだなァ」 血塗れのダガーを脇に放りながらシャドウは余裕たっぷりの笑みを口元に湛えている。 シャドウに忠告されるまでもない。火箸を突っ込まれたように肩の傷は熱を帯び、その熱がシンの思考に霞をかける。 ――マズイ、このままじゃ…… じわじわと迫ってくる死の予感、そして焦り。今までとは違う状況のせいか、フリーダムと戦った ときの感覚が起こる気配もない。 右腕に力を込める。そのあまりにも頼りない感覚にシンはゾッとした。 「――どんな気分だ? 誰かに自分の命を握られてるってのは」 そう、まさに八方塞がりだ。 逃げ道は炎の壁に遮られ、助けを呼ぼうにもリサたちは壁の向こうでデスティニーも未だ戦っている。 自身の身体ですら利き手を八割方潰され、手持ちの武器もわずか。 そして今のシンに、この状況を打破することができるほどの冷静さは残っていなかった。 ――どうする? どうする? どうする!? 考えれば考えるほど沼に沈んでいくように思考が深みにはまっていく。 そのせいか、半ば意識が薄れてきた頭で先ほど浮かんだ疑問がシンの中で蘇ってきた。 ――なんでコイツは、すぐに止めを刺さない……? シンにとってはほぼ手詰まりのこの状況、ただ片をつけるだけなら一瞬で終わるはずである。 いや、何度も繰り返してきた攻防の中では明らかにその機会は複数回あった。最初の一撃のときもそうだったのだ。 狩場に追い込んだ獲物をいたぶるためというシンプルな理由も思い浮かんだのだが、シンには それだけはありえないという確信が何故かあった。 「ハン、なんだァ? 血を流しすぎて逆に落ち着いてきたか? つまらねェ、つまらねェなオイ」 大げさな動作でため息を吐き、シャドウは上体を前に倒したまま顔だけをシンへと向ける。 「まだそんな余裕があるなら仕方ねェ……腕一本いっとくか」 不自然な前傾姿勢からシャドウは再び獣の速さで駆け出した。 向かう先は当然シン、右手には高々と掲げられた歪なナイフ。 ――腕……! 迎え撃とうとシンも動き出すが、感覚が鈍く反応が遅れる。 狙いはおそらく左腕。だが先程から続いているように言葉で縛りをかけ、意識を背けたところで狩り取ることも十分考えられる。 これ見よがしに掲げられたナイフすら囮であるかもしれない。 またもシンは思考の迷路に惑う。それこそがシャドウの狙いであるのだが、それを悟ることが出来る精神状態ではなかった 「いただきだ」 シャドウの口の端が釣り上り、ナイフが時計回りに弧を描きつつ下段からシンを襲った。 シンとシャドウの決着が時間の問題と見た黒いデスティニーは視線をデスティニーへと戻す。 相も変わらず呆然と窮地に陥った主を見ていることに微かな苛立ちを覚えたが、それを一切表に出さず漆黒のアロンダイトを構え直した。 「向こうも直に決着が付くようだな」 聞こえているはずなのだがデスティニーに反応はない。声も届かないほどにショックを受けているようだった。 黒いデスティニーは失望したように息を吐き、まるで興味をなくしたように先程まで発していた気迫を幾分か薄めた。 呆気ない幕引きだ、と黒いデスティニーは胸中で呟いた。彼女自身は戦いに酔い狂うような性分 ではないのだが、動きもしない無抵抗な相手を破壊することに物足りなさを感じていた。 「……この程度で戦意を失うような半身ならば、早々に斬って捨てるのが最良か」 背中のスラスターが唸り声を上げ、広がった黒い翼から光の粒子が溢れ出す。 「――終わりだ」 分厚い壁を叩きつけるような音と同時に黒い影が疾走する。大剣の切っ先が瞬時に音速を超え、 並のMSならば避けられない一撃が半秒に満たない間に目標に到達する。 衝撃と共に地面が爆ぜた。鮮やかな芝と土が巻き上げられ、土煙が広がる。 ――だが、黒いデスティニーは失念していた。 自分の真価を。そして只の木偶と化したと思い込んでいた相手も同じ能力を持っていることを。 相手が、並のMSではないことを。 「何っ……!?」 地面に突き立てた刃が獲物を捕らえられなかったことを知った黒いデスティニーは初めて驚愕の 感情を宿した表情で周囲を素早く見渡す。 いつの間にそこまで移動したのか、地面に手足を投げ出していたはずのデスティニーが空中に 浮かんでいた。顔の向きと表情は変わらず、しかし真紅の翼から煌く光の翼を広げて。 「EBMか!」 叫びながらも黒いデスティニーは半ばまで埋まったアロンダイトを振り上げ、大地ごとデスティニーを切り裂いた。 だが不発、両断されたトリコロールカラーの影は蜃気楼のようにかき消えた。 舌打ちをしながら黒いデスティニーも翼を広げ飛び立つが、そこから光の翼が飛び出す直前に ミラージュコロイドが作り出した残像を引きずりながらデスティニーが折りたたまれたままのアロンダイトを叩きつけた。 「ぐっ!?」 かろうじて黒いデスティニーは右腕の実体盾で防ぐ。峰にあたる部分の刃によってアンチ ビームシールドに一条の傷がつけられた。 振り抜かれたアロンダイトはその反動で折りたたまれた刀身を展開し、発生器から光の刃を伸ばす。 構えは大上段、背に付きそうなほどの位置から真正面に振り下ろされた大剣はそれ自体の重量 に遠心力が加わり、瞬間的にではあるがMSサイズであればその名の通り戦艦をも両断しかねないほどの威力まで高まった。 黒いデスティニーは実体盾をパージし、両手の甲からビームシールドを発生させて頭上で交差させる。 二重のビームシールドに渾身の力を込めて叩きつけられたアロンダイトは阻まれたが、その 強烈な一撃によって生じた衝撃によって今度は黒いデスティニーが地面に墜落した。 ――不味い! 地面を一度バウンドするほどの勢いで落下した黒いデスティニーの身体は一時的に機能不全に陥った。 先程とまるで同じ、しかし立場は逆の状況。となればこの後の流れも自ずと定まるはず…… だった。 「――なんだと?」 自身が見た光景を信じられず黒いデスティニーは思わず呟いていた。 致命的な隙、絶対的な勝機を前にしながら、デスティニーはアロンダイトを放り捨て、シンとシャドウの元へと飛んでいったのだ。 瞬時に黒いデスティニーは理解する。デスティニーにとって、自身はただの障害物でしかないのだと。 「…………」 自由の利かない身体にありったけの力を込め、なんとか拳を握る。そうでもして誤魔化さなけれ ば湧き上がる怒りを抑えられそうになかった。 「まぁ、いい。まだ想定の内だ」 平静をつとめ抑揚のない声で呟いたが、固く握り締めた拳――爪が食い込んだ手のひらから光の雫が垂れていた。 前ページ次ページ悠久幻想曲ネタ